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日本の社会の貧富の差は、いまやどんどん拡大している。 新たな階層社会が生まれようとしているといってもいいほどだ。
一方では、ニッポン放送買収で話題になったRやRのような新興ベンチャー企業が次々と登場し、「勝ち組」「IT長者」といわれる新たな富裕層が登場している。 数十億円、数百億円という金融資産を持つ金持ちたちが増えていっている。
しかし下の方に目を向ければ、ふつうのサラリーマンは年収が減り、仕事の負担はますます増大し、しかも年金も期待できなければ将来の希望もないという悲惨な状況になりつつある。 この先、給料がさらに下がることはあっても、上昇に転じることはなさそうだ。
「平均的なサラリーマンが年収700万円も800万円ももらっているということ自体が、世界的な常識からすれば、ある意味で異常なことだった。 欧米の先進国でも、世帯年収が300万円から400万円というのがグローバルスタンダードなのである」日本でも、これからサラリーマンの年収は三百万円に近づいていくというのである。
理由は簡単だ。 終身雇用制と年功序列賃金が、急速に崩壊しているからなのである。
かつては大学を出て大企業に就職し、あとは出世の階段を順番に上がっていくことができれば、人生は安泰だった。 能力のある人もあまりない人も、会社という家族的な組織に守られて、それなりに安定した人生を送ることができたのである。
ところが企業と社員のそうした幸せな関係は、一九九0年代以降徐々になくなった。 バブルが崩壊して未曾有の不況が続き、「経済の構造を変えなければ、景気の回復はありえない」と考えられるようになったからである。

そしてだれもがともに豊かになっていけるという高度経済成長的な構造に決別し、日本企業の多くは、「グローバルスタンダード」という名前で呼ばれるアメリカ型の実力経済へと大きく舵を切っていった。 この決断が生み出したのは、大きな痛みだった。
大企業といえどもいつ倒産するかわからず、会社員はぬるま湯から放り出されて、いつ解雇されるのか、いつ給料を減らされるのかわからないという不安定な身分に陥ってしまったのである。 そんな時代に、サラリーマンはどうやって人生設計を立て、どうやって暮らしていけばいいのだろうか。
座して貧乏になるのを待っているだけで、いいのだろうか。 では、起業家になるという道はどうだろう。
思いついたアイデアから会社を起こして成長させ、もしうまく離陸することができれば、数千万円の年収はすぐに実現できる。 自社株で数百億円の資産家になることだって夢ではないそうなれば人生は安泰だ。
世間の平均年収が三百万円になろうが二百万円になろうが、関係ない。 年金制度が崩壊したって、消費税が一O%になったって、ありあまるカネで死ぬまで豊かな生活を事受していける。
しかしよく考えれば、そんな生活を送れる起業家というのはごくわずかである。 昔に比べれば会社設立へのハードルは低くなって、毎年膨大な数の起業家たちが会社を設立している。
しかしそのうち成功できるのはごくわずかで、多くの起業家は離陸に失敗するか、あるいは離陸はできても成長が続かず、鳴かず飛ばずで低空飛行を続けていたりする。 それだけならまだいいが、仮に会社が倒産してしまえば、立ち直れないほどのダメージを受けることもある。
たとえば自宅を担保に銀行からカネを借りて事業資金に突っ込んでいたりすれば、目も当てられない。 起業家になるというのは、ものすごくハイリスク・ハイリターンの世界なのである。

ではサラリーマンのままで、人生を続けていくしかないのだろうか。 勤め人というのは「ロ−リスク・ロ−リターン」と言われて、儲けは少ないけれどもリスクも小さい職業だと言われてきた。
しかしいまの時代を見てみると、決してサラリーマンはロ−リスクでもなくなってきた。 大企業だっていつ倒産するかわからないし、当然リストラもある。
下手をすると「ハイリスク・ロ−リターン」という最低の結果にさえなりかねないでは、どうすればいいのだろう。 ここで私は、ひとつの新しい生き方を提案したい。
それは、「経営メンバー」という仕事である。 「経営メンバー」というのは、ずいぶん耳慣れない言葉だと感じられる人も多いだろう。
その仕事をひとことで言えば、ベンチャー企業で役員や執行役員、事業本部長などに就任してオーナー経営者を支え、みずからの能力と責任で事業を遂行していく人たちのことである。 今まで書いてきたように、一九九0年代以降、多くのベンチャー企業が設立されるようになった。
その中から飛び出してきた「勝ち組」企業の経営トップは、たいていは猪突猛進型で、素晴らしいパワーと動物的カンを発揮して会社を離陸させている。 だが会社がある程度の規模になってくると、そうした猪突猛進だけでは組織が成り立たなくなってくるのである。
多くの勝ち組企業は、株式上場などの一定のタイミングに達した段階で、大きく人事システムを変更させている。 「経営メンバー」と呼ばれる人材を大企業などから数多く引き抜き、経営のかなりの部分を任せるようになっているのだ。
たとえば、この本の後半に登場していただいた人材アウトソーシング企業Fの岳史社長は、こんなふうに語っている。 「Fがさらに次のステージに上がっていくためには、新たな人材を導入していく必要があるということに気づきました。

ずっと一緒にやってきた創業メンバーというのは無から有を生みだし、ゼロから一を作り出してきた猪突猛進型の人材です。 しかしそうして立ち上がった企業が今度は百から千へ、さらには千から一万へと成長させようとすると、別の経営能力が必要とされるようになる。
人事や経営戦略、営業などの各分野でのスベシャリティが求められるようになり、そして大企業にいてスベシャリテイを持っているような人材を、ヘッドハンティングしてきで幹部として登用すべきだという結論に達したのです」いま、この経営メンバーという仕事に対するニ−ズは、たいへんな勢いで高まっている。 多くのベンチャー企業が二疋の成長段階に達し、大企業の優秀な人材を求めるようになってきているのだ。
そして日本の産業界におけるベンチャーの勢力は、今後も素晴らしい勢いで増えていく。 経営メンバーのニ−ズも、どんどん高まっていくのだ。
経営メンバーは、ミドルリスク・ミドルリターンである。 たしかにサラリーマンよりはリスクは高い。
ベンチャーだから会社は倒産するかも知れないし、仕事ができなければ責任も問われる。 しかし自分で資金を作って会社を起こすオーナー経営者ほどの高いリスクは要求されない。
だから、ミドルリスクである。 その一方で、オーナー社長ほどではないものの、サラリーマンに比べれば圧倒的に高い収入も期待できる。

成功したベンチャーの経営メンバークラスともなれば、最低でも千数百万円、平均して数千万円クラスの年収を期待できる。 日本全体が「勝ち組」と「負け組」に二分されて、収入も数千万円、数億円クラスと三百万円クラスに分けられてしまうのだとすれば、「経営メンバー」は明らかに前者の勝ち組に入ることができる。
座して年収三百万円の生活を待つよりは、中程度のリスクをおかし、経営メンバーへと転身する人生を検討してみてはいかがだろうか。

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